私が「いま」好きな小説、それをアップして行こうと思う。
「いま」、とりあえずはそれに限定して行きたい。と言うのも、いままでで、好きな小説の分野、そして作家には、かなりの変遷の歴史があったから。ここでは、その歴史を述べてみたい。
子どものころは除いて、まず小説に惹かれたのは、高校に入ってすぐくらいに読んだ、カミュの「異邦人」だった。それを読んだときの衝撃は、いまでも思い出すくらいだ。
よく知られる「今日ママンが死んだ」の書き始め、それは何か「ええかっこしい」と言うか、わざとっぽい書き出しだな、そう感じた。しかし読み進むに連れ、それが決してそういう種類のものではなく、主人公の普通の心の表れなのだとわかってきた。
太陽が眩しかったから殺人を犯した。そこから表れる事実は、絶対というものはないということ、他人(ひと)とは自分ではなく、まったく別個の人格を持った存在であり、そういう訳のわからない個人の集まりが社会であること、従って、そういう世界であるならば、不条理は何等特殊なことではなく、逆に普通のことであり、それを受け入れるしかないこと。それらいろいろなことが、突然、私を襲ってきたのであった。
いま嵌ってしまっている作家、それは「矢口敦子」である。新聞の紹介記事に「償い」が載っていて、それを見て、何となく面白そうだなと思って買って読んでみたのが、この作家との出会いであった。そして、たちまちその魅力に取りつかれ、たちまちすぐに手に入る文庫本3冊を読み終えた。ほとんど一気に3冊を読んだ感じである。
少し前から好きな作家として「川上弘美」がある。感情の希薄な、空気のようなその小説、読んで、心がホッとする気持ちになる。
「梨木香歩」、この作家は、すごいと思う。ファンタジーとはこういうものか、それをまさに教えてくれる作家である。